乳がんが増えてきました

沖縄県でも乳ガンが多くなってきました。平成12年には320名余りの方が治療を受けています。これまで沖縄県は乳ガンで死亡する方も日本で一番少なかったのですが、平成12年には全国で下から3番目にあがってきました。

乳がんを治療する方法には1.手術、2.ホルモン治療、3.抗ガン剤治療、4.放射線治療の4つが基本になります。

手術も乳房を全部切除した時代から最近ではガンを部分的に切除して乳房を残す手術の方法が増えてきました。私達の所でも年間の手術140例のなかで50%ほど乳房温存手術を行なっています。

その他に変わってきたことは、抗ガン剤の使い方です。以前は抗ガン剤はきついので、ガンが再発してから使われることが多かったのです。しかし1998年に世 界中の乳ガンの専門医が集まり、これまでの治療を再評価することが行なわれました。その結果手術直後に乳ガンの悪性度をきめてから薬を使うように方針がだ されました。ホルモン剤と抗ガン剤の使い方の指針が世界に向けて発信されたのです。

これは大変な変化です。なぜ再発してから抗ガン剤を使うより、手術のあと、まだ体力が回復していないと思われる時期に使うように指示されたのでしょうか。

たいへんつらいことではありますが、再発してからたくさんの抗ガン剤を使用してもガンを死滅させることは大変難しいことが分かってきたのです。再発してから は遅いのです。世界中の乳ガンの専門医が数多くの治療成績を分析して出した結論は、手術直後にガンがほとんど残っていない時に徹底して乳ガンを治療しなさ い。ガンを再発させない治療をしなさいという方針を出したのです。

とくに脇のしたのリンパ節に乳ガンが転移している人には、かならず抗ガン剤を使用しなければいけない。また転移がなくても若い人の乳ガンは再発しやすいの で、抗ガン剤を使いなさいと指導されています。このような指導のおかげで少しづつですが、乳ガンという病気が治るようになってきました。乳ガンは恐い病気 のような印象をもっている方が多いのですが、実は乳ガンになった方の80%は治っているのです。

この治療成績をもっとあげる方法は簡単です。住民の60%以上が乳ガン検診を受けると乳ガンの死亡率が減ると言われています。沖縄県の乳ガン検診受診率は 16%程度なのです。検診を受けずにガンを悪くしてから治療するのはいけません。お金もかかるし、強い抗ガン剤を使わなければなりません。早期発見すれば 一日一錠のホルモン剤を飲むだけですむことが多いのです。検診を受けて早期発見につとめたいものです。

那覇西クリニック 理事長
玉城信光