2025年

今年の早期乳がんは69.5%まで上昇してきました。
70%を超えるまで皆で乳がんの早期発見に努めましょう。


早期(0期と1期)の乳癌は20年以上経っても9割以上の患者さんは遠隔再発がなく、早期発見(乳癌検診)の重要性が分かります。
* 遠隔再発とは乳房切除した後の皮膚や温存した乳房内の「局所再発」以外の再発(肺、肝、骨、脳などへの転移)のことです。

「病期4(ステージ4)(初診時既に遠隔転移のある)乳癌であっても、手術を行い、適切治療を続けることができれば、手術15年後でも約4割の方は元気です。」

乳癌には性格の異なる5つのサブタイプ(種類)があり、治療(ホルモン療法、抗がん剤治療、抗HER2療法)方法や再発しやすさが異なります。この5つのサブタイプは乳癌細胞がホルモン受容体(HR:Hormone Receptor)を有するルミナル乳癌と、HER2蛋白の過剰発現があるHER2乳癌に分かれます。更にルミナル乳癌は癌の転移や増殖の強さでAとBに分けます。また、HER2乳癌も同時にHRを有するHER2-Luminal乳癌と HRを有しないHER2-Enriched乳癌に分かれます。HRもHER2蛋白過剰発現のない乳癌はTriple Negative乳癌です。
* 免疫染色Ki-67を行うようになった2011年4月以後の症例です。
** サブタイプは免疫染色によります。HR+の症例の中でKi-67 20%未満をルミナルA乳癌、20%以上をルミナルB乳癌としました。
1)ホルモン療法が中心の乳癌はルミナルA(全体の約5割)とB(全体の約3割)に分かれ、手術後10年目でそれぞれ、約5%と約15%に再発を見ております。
2)抗HER2療法が中心のHER2陽性乳癌はHR+(全体の8%)とHR-(全体の
5%)とも約10%の再発率です。
3)抗癌剤治療が中心となるトリプルネガティヴ乳癌(全体の7%)は再発率が最も高く、約25%(4分の1)になっています。
このため、ルミナルB症例では抗癌剤や分子標的薬(CDK4/6阻害薬)の追加、トリプルネガティヴ症例では免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)が使われるようになっており、再発率の低下に期待しております。

再発後の生存率はルミナル症例では分子標的薬(CDK4/6阻害剤など)により、HER2症例では多くの抗HER2薬等の導入によりかなり改善しています。
これに対してトリプルネガティヴ症例では再発はほぼ確実に癌死に繋がってきた。しかしこれも免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)や分子標的薬(パープ阻害薬など)の導入により改善が期待されています。

Stage 1の早期乳癌でも、トリプルネガティブ乳癌は再発しやすく、手術前・後に抗癌剤治療、数年前から免疫チェックポイント阻害薬による補助療法を行うことが多いです。
また、術後10年まで観察すると、ルミナルB症例の再発率はトリプルネガティヴ乳癌と同しになっています。このため、ルミナルBで化学療法の必要性をより確実に知るために、Ki67の免疫染色の他、最近は多遺伝子アッセイ(OncotypeDx、等)を用いることが多くなっています。

Stage 1(早期乳癌)で再発後の生存率はトリプルネガティブ乳癌では他のサブタイプに比べて悪く、再発率をそのまま反映するため、手術前・後の抗がん剤や免役チェックポイント阻害剤による治療(補助療法)が検討されます(前述)。
ホルモン療法が中心のルミナルB症例も再発が生存率の低下に繋がるため、手術後の経口抗癌剤や分子療養薬(CDK4/6阻害薬)が検討されます。

Stage 2でトリプルネガティヴ症例の再発は他のサブタイプに比較して更に再発率は高くなります。
ルミナルBが術後4年を過ぎると再発が急激に増え、術後7年以後は再発が見られなくなります。Stage 2のルミナルB乳癌では術前または術後抗癌剤治療に加え、CDK4/6阻害剤(内服分子標的薬)の術後治療が保険適用となっており、推奨されています。

Stage 2ではいずれのサブタイプでも再発症例が増えてきます。再発症例に対する治療薬の選択が増えてきているため(ルミナルタイプでは耐性乳癌に対するCDK4/6阻害剤、m-TOR阻害剤、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異陽性乳癌治療薬(カピパセルチブ)、ESR-1変異乳癌治療薬(イムルネストラント)、ダトポタマブデルクステカンなど、HER2タイプではトラスツズマブデルクステカン、トリプルネガティブタイプでは抗PD-L1(ペンブロリズマブ)や抗PD1(アテゾリズマブ)などの免疫チェックポイント阻害剤(免疫療法)やサシツズマブゴビテカン、parp阻害薬、など)、再発後の生存率改善が期待されております。

進行乳癌であるStage 3ではいずれのサブタイプも再発時期が早くなり、その時期を過ぎると再発が見られなくなる;
Triple Negative - 約2年(無再発率 約60%)
HER2-Enriched - 約2年(無再発率約75%)
HER2Luminal - 約3年 (無再発率 85%)
Luminal B - 約3年(無再発率 75%)
Luminal A - 約6年(無再発率 80%)

Stage 3での再発では、5年を経過した生存率はLuminal B、HER2- Enriched、Triple Negative症例が80%前後とほぼ同じで、100%のLuminal A、95%のHER2-Luminalより目立って悪いです。
しかし、先に紹介しました治療薬の選択肢が増えてきたため、従来より治療成績は向上しており、今後さらに改善することが期待されます。

「病期4(ステージ4)(初診時既に遠隔転移のある)乳癌であっても、手術を行い、適切な治療を続けることができればトリプルネガティブ乳癌以外は長期生存が得られるようになってきており、特にHER2タイプ(HR+/HER2+、HR-/HER2+)乳癌では治癒を望めるようになっています。
トリプルネガティブ乳癌においても抗PDL1、抗PD1抗体療法の登場により、長期生存に期待が持てるようになりました。



