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玉城研太朗スタンフォード大学からの便り

−那覇西クリニックスタンフォード式乳がん診療への取り組み−

 Vol.01 スタンフォードにおける患者さんサポートシステム

那覇西クリニック 乳腺科
診療部長 玉城 研太朗

 2015年3月より米国カリフォルニア州にある世界最高峰のスタンフォード大学で乳がん研究と乳がん診療を学んでおります。ここで学んでいることは極めて斬新ではありますが、単刀直入に申し上げて、那覇西クリニックで行われております診断システム、治験や臨床試験を含めた治療法、そして患者会活動を含めまして世界最高峰に劣らないものだと自負しております。那覇西クリニックがさらに世界最高峰に近づくため、世界のリーディング乳腺専門施設になれるよう、現在カリフォルニアの地、シリコンバレーの真ん中で日々奮闘しているところです。カリフォルニアへ参りまして3ヶ月が経過しましたので、スタンフォード大学の乳がん診療の取り組みを前編としましてご紹介したいと思います。

スタンフォード大学概要

 大陸横断鉄道の一つセントラルパシフィック鉄道の創立者でもあるリーランド・スタンフォードが、腸チフスの病で早逝した彼の子息(一人っ子であった)であるリーランド・スタンフォード・ジュニアの名を残すために、夫人とともに1886年に構想。当時のハーバード大学学長 チャールズ・ウィリアム・エリオット に相談するなど、6年間にわたる準備の末、1891年に設立された大学です。サンフランシスコから約60 km南東に位置し、地理上も、歴史的にもシリコンバレーの中心に位置しています。キャンパスの広さは全米屈指で、その広さは8180エーカー(3310ヘクタール≒993万坪)です。スタンフォード大学は各種の大学ランキングで非常に高い評価を得ており、2006年度のニューズウィーク世界大学ランキングでは世界第2位とされました(以上ウィキペディアより)。

フーバータワー、大聖堂、大聖堂外観の写真

写真は左よりフーバータワー、大聖堂、大聖堂外観。スタンフォード大学はそのほかにも美術館など観光名所が多数あり、世界各国より多くの観光客が連日訪れています

スタンフォード大学の乳がん診療

マークペグラム教授と小生の写真

マークペグラム教授と小生

 乳がん薬物療法の世界的権威、マークペグラム教授の下で基礎研究と乳腺診療を勉強しております。乳腺診療に関しましては前述しましたとおり那覇西クリニックも決して劣ることはないのですが、スタンフォード大学の特徴をご紹介させて頂きたいと思います。

スタンフォード大学におけるクリニカルトライアルのシステム

 まずはクリニカルトライアル(治験・臨床試験)のお話です。那覇西クリニックでも以前より治験・臨床試験を積極的に導入してまいりましたが、やはりこちらの治験・臨床試験は規模とシステムがかなり成熟しております。米国のNCCNガイドラインでも治験・臨床試験を取り入れることが患者さんにとってメリットであるということが記載されており、患者さんもどのような臨床試験があるのか我々に問いかけてまいります。またクリニックのエントランスでは患者さん自身がどのような治験・臨床試験が行われているのか検索できるパソコンが設置されており、患者さん自身が自分の疾患に対して意識が高いというのが印象です。

スタンフォード大学におけるクリニカルトライアルのシステムの写真

 上記の写真はその検索システムですが、まず左側の写真ではクリニカルトライアルとはどういったものなのか、どのようなクリニカルトライアルが現在行われているか、そして患者さんの体験談などもこちらの画面から検索できるようになっています。どのようなクリニカルトライアルが行われているのか画面をタッチしますと、部位別の検索項目が列記されます(写真中央)。そしてBreast Cancer(乳がん)をタッチしますと現在34種類のクリニカルトライアルがスタンフォードで行われており(写真右)、さらに術前なのか術後なのか、転移再発なのかホルモン受容体やHER2蛋白の発現あるいは特殊な遺伝子変異の有無などさらに細分化され、それぞれの試験の概要を確認することができます。

クリニカルトライアルのTreeの写真

 またスタッフルームには上の写真のようにクリニカルトライアルのTreeが掲示してあり、どの患者さんがどのようなクリニカルトライアルが適切か、日々皆でこのTreeの前でディスカッションしております。このTreeに関しては那覇西クリニックでもすでに導入しているものですが、規模はやはりスタンフォードの方が大きいですので、那覇西クリニックにおいても規模と内容を充実させていく必要があるなあと痛感いたしました。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の検査と遺伝子パネルに関して

 アンジェリーナジョリーの問題で日本でもお馴染みとなりました遺伝性乳がん卵巣がんの診療ですが、当院でも以前より力を入れて取り組んでいる問題ですが、スタンフォードにおきましては、日常診療の一環として診療がされております。つまりリスクが少しでもある方は遺伝子検査は当たり前といった感じです。以前ですと遺伝情報を知ることのデメリットなどが論じられたかと思いますが、現在あるいは今後近い将来ではやはり遺伝情報を知らないことのデメリットの方が大きい印象です。遺伝子変異を有する患者さんの治療方法が薬物療法を含めどんどん開発されていくことを考えますと、沖縄県でも遺伝性乳がん卵巣がんの診療にさらに力を入れていく必要があると感じております。また遺伝子パネルに関しても米国では適応患者さんには積極的に行っております。那覇西クリニックもいくつかの方法で遺伝子パネルを使用できますが、米国と日本の決定的な違いは保険適応の有無が挙げられます。日本では残念ながら保険適応になっていませんので現状は大変高価な試験となっていますが、将来的には保険適応のもと通常診療でも使用できることを願っております。

Tumor Board (テューマーボード)の開催

テューマーボードの様子

 週に一度、乳腺診療の各領域の先生方、看護師や種々の職種の人が一同に会して個々の症例の検討を行うTumor Boardが開催されます。ここも大変勉強になりますが、単純に個々のエキスパートの意見としての治療方針ではなく、何故この治療方針なのかということを過去の信頼できるデータ(エビデンス)や最新のクリニカルトライアル、そしてがん細胞の特性をバックグラウンドとして討議が行われます。さすがは世界のトップの集まりで、大変質の高い討議がなされ、患者さんの治療方針が決まってまいります。那覇西クリニックでも同様の討議が行われますが、さらに質の高い討議が行われるよう、帰国後は那覇西クリニックテューマーボードのシステムを構築したいと思います。(写真はテューマーボードの風景)

スタンフォードにおける患者さんサポートシステム

 スタンフォード大学は前述のように、最先端の治療を目指して様々なシステムが構築されていますが、患者さんサポートシステムもまた大変充実しております。こちらに関してもクリニックのエントランスにパンフレットが設置されており、また毎日様々なプログラムが開催されています。

患者さんサポートシステムに関するパンフレット

左がプログラムが掲載されている冊子と写真中がその中のページ、右はそれぞれのプログラムのパフレット

 内容も多種多様で、講演会、イベント、ワークショップ、フィットネス、ヨガ、ヒーリングやスピリットといった内容まで様々です。もちろん乳がんに関連したリンパ浮腫の講座や化学療法の際の脱毛に関するウィッグバンクなども大変充実しております。那覇西クリニックもひまわりの会の皆様が大変すばらしいご活動をされており頭が下がるばかりですが、スタンフォード式を是非ひまわりの会の皆様と一緒にできたらと考えております。

患者さんのための図書室の写真

患者さんのための図書室;中央は医学専門の図書館司書

 また特筆すべきは、スタンフォードには患者さんが自由に活用できる医学図書室があるということです。ご自身の疾患に関する最新の医学研究、医学論文をこちらで検索、また論文も自由に読むことができます。専任の図書館司書の方がいらっしゃって、患者さんにアドバイスをしております。

未来の沖縄を見据えて

研究室にて撮影した写真

研究室にて

 初心を忘れるべからず、我々那覇西クリニックの夢、当方の夢は「沖縄から世界へ」であります。その目的の達成のため米国で修行をしているところです。医学研究に関しましてはいくつかテーマを持って取り組んでおりますが、まず一つは新しい血管新生薬を作ること、願わくば沖縄の国際医療都市とリンクした創薬研究・開発ができればと考えております。2つ目は乳がんではこれから注目されると考えられます小胞体ストレスとそのメカニズム、創薬の研究です。細かいお話はまた改めてということにしたいと思いますが、沖縄が医学研究のメッカになる、乳がん治療のアジアの中心、世界の中心とならんことを、そして沖縄がアジアのシリコンバレーとならんことを夢見て、今しばらくスタンフォードで精進してまいりたいと思います。