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エッセイ

Vol.39 乳がんと向き合う/科学的根拠に基づく治療を

 長らく進行乳がんと闘ってきたフリーアナウンサーの小林麻央さんの訃報のニュースに多くの方々が悲しみに打ちひしがれたことだろう。乳腺科の一人の医師として全ての患者さんを救うことができないもどかしさは日々感じることであり、こうした訃報に接する度にわれわれはもっと努力をしていかなければならないと心から思う。

 乳がんというのは腫瘍の大きさ、リンパ節転移の状況あるいは他臓器転移の有無によってステージ分類が行われる。医学は着実に進歩しており、その治療薬も日進月歩で多くの患者がその恩恵を受けているのは事実である。しかしながら早期発見・早期治療に勝る治療薬はない。那覇西クリニックの約3500例のデータを解析すると、ステージ0あるいはステージ1といったいわゆる早期の乳がんでは、それが原因でお亡くなりになる方は非常に少ない。

 乳がん検診で異常を指摘された場合や、自己触診でしこりを感じる、あるいは乳房に違和感があったらすぐに専門の医療機関を受診することを強く勧めたい。

 沖縄県の場合は全国平均と比較しても、乳がんが原因で亡くなられる方が比較的多く、その中には早期で発見されているのにもかかわらず、適正な治療を受けられていない、あるいは自己流の民間療法を受けることにより、治る可能性の高い方が亡くなられている残念なケースもある。

 同クリニックと中頭病院のデータをさらに解析すると乳がんで死亡されている方の約20〜25%程度が自己流の民間療法が原因で亡くなっていることが判明している。このデータが教えてくれるのは、適正な治療を受けることがいかに重要であるかということである。

 進行乳がんがそのまま命のリスクに直結するということも現在では少なくなってきた。テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンターから出されているデータおよびわれわれの施設のデータを解析しても、進行乳がんの治療成績は年を経るごとに確実に改善してきている。この10年の乳がん治療薬の進歩は目覚ましく、また沖縄県でも国際共同治験が実施されており、数年後の標準治療となる可能性のある薬剤の治験も受けられるようになった。科学的根拠に基づいた治療が進行乳がんにおいても非常に重要である。

 いま一度自分の胸を見詰め直してほしい。乳がんの早期発見・早期治療のために乳がん検診を受診しよう。そしてひと月に一回程度は自己触診の習慣を持つことである。そして、乳がんと診断されたら、恐れず勇気を出して科学的根拠に基づく適切な医学の治療を受けることを強くお勧めする。

(琉球新報論壇 2017年6月30日掲載)

那覇西クリニック乳腺科 玉城 研太朗

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