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エッセイ

Vol.38 継続できる運動のすすめ(乳がん治療の観点から)

 昨今、芸能人の罹患をきっかけに連日のように乳がんの話題が取り上げられている。国立がんセンターによると生涯で乳がんに罹患する確率は12人に1人と報告されている。乳がんの生物学的特性(サブタイプ)は多彩でサブタイプによって治療法は異なってくる。治療の一つである薬物療法には化学療法、分子標的療法、内分泌療法などがあり、腫瘍のサブタイプによって治療法を選択している。女性ホルモンに依存した乳がんの場合乳がんの再発を防ぐためにホルモン療法を行うのだが、閉経後に使用する薬の一つにアロマターゼ阻害剤というものがある。術後補助療法において大変重要な薬であるが、この薬の副作用として関節痛がしばしば認められる。関節痛がおこる原因は不明で、又関節痛の程度は個人差があり支障のない方もいれば重篤な関節痛が原因で服薬を中断してしまう方もいる。2013年に米国で開催された世界的に権威のある乳がんの学会において、アロマターゼ阻害剤の関節痛に対し有酸素運動を行うことで関節痛を軽減することができたとの報告があり話題となった。運動の内容は週に2回の筋力トレーニングと週に150分のランニングやエアロビクス、エアロバイクといった有酸素運動でかなりハードなものであった。乳がんに罹患した患者さん全てにこのようなハードな運動を行うことは非現実的で、個々人が実施可能な運動でも関節痛軽減に有効なのか?那覇西クリニックと東北大と共同でアロマターゼ阻害剤内服中の患者さんを運動介入群と非介入群に分けランダム化比較試験を行った。運動介入群には週120分から150分のランニングやウォーキングなどの強い運動、週に60分のラジオ体操などの中等度の運動、階段の上り下りなどの弱い運動をそれぞれ選択してもらった。本研究の結果は、運動を行う事で関節痛の改善傾向が認められ、運動の強度別でも差はなく日常生活でも可能な運動でも関節痛の改善傾向がみられた。

 沖縄県民は現在、食生活の欧米化、ライフスタイルの変遷、運動量の減少に伴い生活習慣病が社会問題になっている。加えて、長寿の国沖縄の地位も危ぶまれており、長寿復活へ向けて今一度沖縄県民のライフスタイルを見直す時期が来ていると考えられる。我々のような医療従事者のみならず、地域住民が一丸となって運動の機運を盛り上げることで沖縄県民の健康長寿復活の一助となると考えられ、継続可能な運動を広く県民の皆様に推奨したいと思う。

(沖縄タイムス 2017年3月9日掲載)

那覇西クリニック看護師 高江洲 睦代

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